姿勢をよくするとやる気が上がる説

 この前家具屋に行った。仕事机を見て回った。ついでに椅子も見た。じっくり見た。”必要な時に呼ぶのでその時にお願い派”の私にとって家具屋の接客は合っているようだ。家具屋のいいところの一つは、店員が「どうですか〜」と直ぐに寄ってこないこと。服屋だとなんであんなにグイグイくるんだろうね。
商品を一通り見た後に、店員さんに「このチェアは、どのくらでへたりますか?」寿命を聞いてみた。なんと、1万回のテストを行っており、1万回すわってもへたらない。つまり、10年くらいは大丈夫。というお墨付きの商品であると説明してくれた。私は商品説明ができない店員スタッフが嫌いだ。プロ根性がかけていると感じてしまう。が、その店員は、私のいくつかの質問に過不足なく答えてくれた。家具を愛しているのだろう。ただの質疑であったにもかかわらず、私の心を踊らせるなんとも心地よい時間にしてくれた。いや、してくれていた。心地の良い時間は落胆の時間へと変わった。店員がうっかり失言をしてしまったのだ。私は「は?」と腹を立てた。「嘘をつくな。」と。店員はこう言ったのだ。「椅子の高さも調整できます。自分にあった高さは、腰への負担、首への負担をへらし、仕事への意欲も沸きやすくなります。そして、やる気も上がってきます。」ん?なんだと?やる気も上がるだと?そんなことあるか。である。体への負担が姿勢で変わってくるということはわかった。そこまではさすが。ほうほうなるほど。が、やる気と姿勢が結びつくだと?姿勢良くしてやる気が上がるなら、苦労はせんのじゃ!と、店員にいきなりいうほど私は子供ではない。ぐぅ。と堪えた。嘘を言いやがって。メンターの記事を以前書いたのだが、メンターに近づきすぎると失望する。という内容。そのすり替えを自分自身で実践してしまった。この店員わかってる!すごい!と尊敬して質疑をして無防備に近づきすぎたために、一つの嘘がゆるせない!と失望してしまった。その店員にキレることもなく、「いろいろありがとうございます。検討します」と言い、店員に下がってもらった。その場で、その椅子をスリスリ。
 少し冷静になり、そのチェアを触りながら、過去の楽しい思い出に浸っていた。「お客様は背が高いので、こちらの背もたれの長い方などいかがですか?」「こちらの椅子は値段が高い割には重くて…」「お客様の今の座り方より、少し深めに座れた方が実は楽に感じますよ」
…悲しい。こんな関係になってしまって悲しい。
 一つの失言。本当に失言だったのか。これだけ家具を愛している人が、嘘をつくのか。椅子に座って高さを調整しながら、自分が間違っていないか疑ってみた。自分が間違っていることなどあり得ないのだが、グリードも「あり得ないなんてあり得ない」と言っていた。椅子に座り、パソコンを操作している真似をして自分に聞いた「ねぇ、俺。やる気上がってるかい?」自分で答えた。「わからない。」上がっている気もするが、変わらない気もする。が、何より、奥で私をみている店員が気になる。また質問があれば直ぐにでも駆けつける準備があるのだろう。くそ、いい店員だ。「実に面白い。あり得ない?あり得ないなんてことはあり得ない」と湯川学もいっていた。物理の先生がそういったのだから。ちくちょう。
 時はたち、今、その椅子に座って記事を書いています。いかがだろうか、店員の教えに従い、椅子には少し深めに、机の高さに合わせ、椅子の高低を調整している。同じ姿勢では首が疲れるので、時には背もたれに寄り添ってバインバインしてみたり。で、一番気になるやる気について。やる気が上がるとクリエイティブな仕事の質は上がると考えている。そして、執筆もクリエイティブな仕事である。今回の記事。面白くかけているだろうか。読んでいるあなたは楽しんでいるだろうか。これができていれば質の良い執筆だったと言える。つまり、やる気がでたといえる。今回、私のやる気の度合いをあなたに決めて欲しい。

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